冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
筧さんは、岩倉さんの腕に手を絡めて体を密着させていた。
社内ではありえない距離感に、江並さんが「うわ」と嫌悪の声を出す。
「誰もいないし、問題ない。そもそも不審者が入り込んだ場合は警備員なり警察に連絡しろ。あと、そろそろ離れてもらえるか」
岩倉さんの言葉を聞いて、なんとなくのいきさつを理解する。
江並さんも同じようだった。
「〝不審者がいたんです。怖い〟で、ここまで連れてきたのね」
「みたいですね。でもたしかに、不審者がいた場合、あのおじいちゃん警備員さんよりは岩倉さんの方が頼りになりそうです」
数日に一度顔を出してくれる優しそうな顔をした警備員さんを思い出しながら言うと、江並さんは「うーん。ちょっと感想がズレてるかな」と苦笑いをもらした。
筧さんは、「でも、すっごく怖かったんです」と岩倉さんにくっついたまま言う。
「岩倉さん、社長のところに向かうところだったんですよね? お仕事の邪魔しちゃってごめんなさい。お礼に、ご馳走させてください。今夜お時間ありませんか?」
「必要ない」
「そう言わずに。駅近くに新しくできたホテルのディナーがおいしいって評判なんです。もちろん、食事のあとはそのままお部屋とってもいいですし。……ね?」
首を傾げての上目遣いを目の当たりにした江並さんは、興奮した様子で私を振り向く。