ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~

「あっ、さっきのご夫婦ですね。」

 月菜(つきな)さんに小さな声が聞こえてきた。ああ、この二人が月菜(つきな)さんが見たっていう変わった夫婦なわけね?

「夫の俺が君の心配をするのがそんなに迷惑か?この日のために残業まで調整してきたのに。」

 凄く真面目な顔で、奥さんに詰め寄る旦那さん。確かにそれはちょっと過保護すぎじゃないかしらね?
 ほら、よく見てごらんなさいよ、彼女相当困ってるみたいじゃない。

「そういう事じゃなくて、私は自分で出来る事を探したいと言ったはずです。それなのに匡介(きょうすけ)さんがここまでついて来てしまっては意味が無いんです!」

 ああ、この二人ヒートアップしすぎて周りが見えていないようね。このままだと面倒だし、どうしましょうか?
 私が二人の間に割って入ってもいいんだけれど……

「だから、俺は君が大丈夫だと分かれば……」

「あなた達は何を騒いでいるんですか?確か今日から新しく入会された鏡谷(かがみや)さんですよね。」

 鏡谷……匡介ですって?それってあの鏡谷財閥の御曹司で、もの凄いやり手の男だと噂の?そんな男性がどうしてこんな場所に?
 月菜さんも同じ事を思ったのか、じっと鏡谷さんを見ている。もしかしたら、聖壱(せいいち)さんや柚瑠木(ゆるぎ)さんの会社と取引もあるのかもしれないわね。

「確か入会するのは奥様の杏凛(あんり)さんだけと聞いてますが。旦那さんはどうしてここに……?」

 後ろから現れて彼らに質問している男性は、調理器具や本を数冊抱えている。きっとこの人が今日教えてくれる先生なんでしょうね。


< 11 / 100 >

この作品をシェア

pagetop