ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「あっ、さっきのご夫婦ですね。」
月菜さんに小さな声が聞こえてきた。ああ、この二人が月菜さんが見たっていう変わった夫婦なわけね?
「夫の俺が君の心配をするのがそんなに迷惑か?この日のために残業まで調整してきたのに。」
凄く真面目な顔で、奥さんに詰め寄る旦那さん。確かにそれはちょっと過保護すぎじゃないかしらね?
ほら、よく見てごらんなさいよ、彼女相当困ってるみたいじゃない。
「そういう事じゃなくて、私は自分で出来る事を探したいと言ったはずです。それなのに匡介さんがここまでついて来てしまっては意味が無いんです!」
ああ、この二人ヒートアップしすぎて周りが見えていないようね。このままだと面倒だし、どうしましょうか?
私が二人の間に割って入ってもいいんだけれど……
「だから、俺は君が大丈夫だと分かれば……」
「あなた達は何を騒いでいるんですか?確か今日から新しく入会された鏡谷さんですよね。」
鏡谷……匡介ですって?それってあの鏡谷財閥の御曹司で、もの凄いやり手の男だと噂の?そんな男性がどうしてこんな場所に?
月菜さんも同じ事を思ったのか、じっと鏡谷さんを見ている。もしかしたら、聖壱さんや柚瑠木さんの会社と取引もあるのかもしれないわね。
「確か入会するのは奥様の杏凛さんだけと聞いてますが。旦那さんはどうしてここに……?」
後ろから現れて彼らに質問している男性は、調理器具や本を数冊抱えている。きっとこの人が今日教えてくれる先生なんでしょうね。