ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「……少しは落ち着いた?」
持って来ていた花柄のハンカチで月菜さんの涙を拭いながら聞いてみる。この部屋に来た時よりも少しは彼女も落ち着きを取り戻したのではないかと思うの。
それにしてもこんな状態の月菜さんを部屋に残して家に来るなんて、ここにいない柚瑠木さんに少しだけ怒りを感じてしまう。けれど今の状態で柚瑠木さんを責めてしまえば、月菜さんは余計に自分が悪いんだと思ってしまうかもしれない。だから……
「月菜さんが泣いているのは、柚瑠木さんが原因なんでしょうけれど……彼もうちに来た時、少し様子がおかしくてね。」
「柚瑠木さんが……?」
私はさっき柚瑠木さんが聖壱さんに会いに来た時の様子を、詳しく月菜さんに話す事にした。
いつもの柚瑠木さんらしくなく、何かに悩んで苦しそうな顔をしていたこと。そしてそれは幼馴染の聖壱さんにしか相談出来ない、柚瑠木さんはそう思って夜遅くに家に来たはずだという事も。
「聖壱と二人きりで話がしたいんです、って。すぐに月菜さんの事だろうと思ったのよ、柚瑠木さんにあんな表情をさせることが出来るのは貴女だけのはずだから。」
私は少なくとも彼のあんな表情を見たことは無かった。いつも冷静沈着で無表情、感情を少しも読ませてくれない男……それが私の知っている二階堂 柚瑠木という人物だから。
「……私が柚瑠木さんを困らせてしまっているようなんです。私が強くなると困るって、彼から言われてしまって。」
月菜さんが強くなると困る?あの人の言う事は何でも分かりにくいのよ、本当は柚瑠木さんだって月菜さんを大切にしたくて堪らないはずなのに……