ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
新婚生活も楽じゃなくて?


 月菜(つきな)さんにいいアドバイスをしたつもりになって、私は機嫌よく玄関のドアを開けたの。

「おかえり、香津美(かつみ)。」

 普段なら聖壱(せいいち)さんが玄関で私を待っている事なんて無いのに、珍しい事もあるのね。もしかしたら柚瑠木(ゆるぎ)さんを送ったばかりだからかも、そう思って深く考えなかったのよ。
 ただ私を見て穏やかそうに微笑んでいる聖壱さんに、少しだけ違和感は感じていたのだけれど。

「ただいま、聖壱さん。あの柚瑠木さんに、もっとしっかりしてくれるように叱っておいてくれた?」

 そう言って私は聖壱さんの隣をすり抜けて、そのままリビングへ向かおうとしたのだけど……その手首をがっしりと彼に掴まれて。
 驚いて聖壱さんを見上げると、彼はさっきと変わらない笑顔のままで……

「聖壱さん、どうかしたの?」

 貼り付けたような笑顔の聖壱さんは、私の手首を強く掴んだまま。彼の様子が何かおかしい……柚瑠木さんが来る前とあきらかに雰囲気が違う。

「俺が叱らなきゃいけないのは、柚瑠木だけじゃないと思うが?」

「……え、それってどういう事?」

 一瞬で笑顔を消し去って、真面目な表情で私の事を見つめてくる聖壱さん。彼に叱られなくてはいけないのは、柚瑠木さんだけじゃない……?

「さっき柚瑠木から聞いたぞ。料理教室の講師は香津美の好みの男性なんだって……とても素敵だって喜んでいたそうじゃないか?」

 聖壱さんのその言葉に、全身からザッと血の気が引いた気がした。どうして柚瑠木さんがそんな事を?


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