ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
【プルルル……プルルル……プルルル……】
聖壱さんはわざと会話の内容が聞こえるように、スマホの通話をスピーカーに切り替えてくれる。という事は電話の相手は十中八九、柚瑠木さんでしょう。
もしかしたらあの後、二人が良い雰囲気になっている可能性もあるというのに……彼に対してこういう遠慮のない所が結構面白いなと思っていたりする。だってあの冷徹男が嫌そうな顔をして電話に出るのを想像するだけで楽しいんですもの。
「もしもし、柚瑠木。ちょっと話があるんだが、今いいだろうか?」
『もしもし? 貴方達夫婦は揃いも揃って、どうしていつも僕らの邪魔ばかりを……』
ふふふ。はっきりと分かる柚瑠木さんのイラついた声に、私と聖壱さんは顔を見合わせて笑いを堪える。どうやら本当に二人は良い雰囲気だったようで。
しかしあの男がどんな顔で月菜さんに甘い言葉を囁くのか、それはそれで気になるのだけれど。
「邪魔? へえ、俺の電話が邪魔だと思うようなことを、あの冷徹男と呼ばれてきた二階堂 柚瑠木がね……くくっ!」
いつもよりずっと意地悪く笑う聖壱さん、いつもと違う柚瑠木さんの様子に彼も楽しくてしょうがないという顔をしている。
『余計なお世話です。聖壱だって結婚後は家に帰ると連絡しても繋がらなくなったと、サポート役の沖名さんが愚痴ってましたよ』
もちろん柚瑠木さんだって、言われっぱなしで黙っているような男性ではない。しっかりと聖壱さんにも釘を刺すかのように言い返す。
確かに仕事の電話で沖名さんに迷惑をかけるのは良くないわね、聖壱さん。そう思ってちらりと彼の顔を見ると、悪いことがバレた時の子供のように、困ったように笑ってみせる。
その表情が可愛くて、つい「しょうがないわね」なんて言ってしまいそうになるの。