ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
聖壱さんは私の為にそうしてくれているのだろうけれど、彼だって責任ある立場なのには変わりない。これからは沖名さんからの連絡は私にしてもらおうかしら、なんて考えていると……
『……ゆ、柚瑠木さん……っ』
電話の向こうから月菜さんの焦ったような声が聞こえて、私は聖壱さんと顔を合わせる。もしかして月菜さんに何かあったのかしら?
そんな私の心配は聖壱さんにも伝わったらしく……
「……今なにか、月菜さんの声がしなかったか?」
さっきの月菜さんの声について、柚瑠木さんに聞いてくれた。でもあの冷血男は月菜さんの事をさほど気にした様子もなく、いつも変わらないトーンのままで話し続ける。
『聖壱の気の所為じゃないですか?それより前に話していた○○社の事なんですが……』
あっさりと話題を変えてしまう柚瑠木さん。それがどういう事なのか分からない私は月菜さんの事が心配でイライラ。でもその時、柚瑠木さんの小さな囁き声が漏れ聞こえて……
『大きな声を出すと、聖壱に聞こえてしまいますよ?』
……と。いったい何をしているのあの二人は!?
驚いて聖壱さんを見ると彼は可笑しそうに笑いを堪えていて。つまり、あの柚瑠木さんが電話中にもかかわらず月菜さんとイチャついているって事なの?
「ああ、その件だが……柚瑠木の言ってた通り少し気になる報告があってまた今度会って話をしたい」
今の状態では鏡谷夫妻の事は話しにくいと判断したのでしょうね、聖壱さんは柚瑠木さんと次に会う約束だけを取り付ける。
もしかしたらこれ以上二人の邪魔をして、後で仕返しされては面倒だと思ったのかもしれない。
『そうですね、ではまた連絡を下さい……出来る事ならば昼間に』
もう夜には電話をかけてくるなとばかりの嫌味な口調で、柚瑠木さんはさっさと通話を終わらせてしまった。本当に邪魔だったみたいね、私達……