ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
月菜さんの話では、柚瑠木さんが寝言である名前を呼んだと言う事。「ますみさん」と言う呼び方からして女性の名ではないかと言う、彼女の不安な気持ちを素直に私に話してくれた。
直接柚瑠木さんにその事を聞くことも出来ず、苦しんでいる月菜さんに気持ちが痛いほど伝わってくる。
これでもし柚瑠木さんを問い詰めて「貴女には関係ない事です」なんてことを言われれば、どれだけ彼女が深く傷付くか……
あの人ならやりかねないと、なんとなく怒りまで湧いてきそうになるの。
「そうね、月菜さんが不安になってしまうのも無理はないわ。しかしあの柚瑠木さんが寝言で名前を呼んでしまうほどの相手なんて……」
ちょっとその事が不思議だった。幼馴染の聖壱さんを相手にする時でも、柚瑠木さんは一線引いているのを感じるのよ。そんな彼が夢の中でまで名を呼んでしまうほどの人……?
彼と長い付き合いのある聖壱さんは知っているのだろうか?
「……ちょっといいだろうか?勝手に話を聞いて申し訳ないと思うが、俺からも少し月菜さんと話をさせて欲しい。」
そう思っていると、ドアの前でお茶を淹れてきた聖壱さんがトレーを持って立っていた。多分黙って話を聞いていたのでしょうね。
「どうぞ、聖壱さん。私の隣に座って、貴方の話をしてちょうだい。」
「ああ。俺が話しても良いかな、月菜さん。」
私の隣に座った聖壱さんは、真っ直ぐに月菜さんを見つめて彼女の覚悟を確認しているようだった。
こんな真面目な聖壱さんの表情は滅多に見ない、いつも少し余裕のある笑みを浮かべているのが彼だから。それだけ柚瑠木さんの事で大事な事を話すと言う事なのでしょう。
「よろしく……お願いします。」
月菜さんは膝の上で拳をギュッと握りしめ、聖壱さんをしっかりと見つめ返して頷いて見せた。