ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「ああ。アイツはずっと誰かを愛し誰かに愛されたくて堪らない、そんな本音を隠し続け生きてきた男なんだ。そんな柚瑠木をこんなにも変えてしまう、そんな月菜さんならきっと出来るはずだから」
柚瑠木さんがあの冷たい仮面の下に、そんなにも誰かを求め続けてる切なさを隠していたなんて考えもしなかった。それほどの深い何かを抱え続けているから、彼は月菜さんの好意を素直に受け取れないままでいるのね。
「でも私は、柚瑠木さんを振り回せるような魔性の女では……!」
聖壱さんの言葉を聞いて月菜さんは焦った様子でそう言ったの。確かに振り回せとは言ったけれど、まさか「魔性の女」なんて言葉が返ってくるとは思わないでしょう?
月菜さんは真剣な顔をしていて、冗談で言っているわけではなさそう。その様子に私と聖壱さんはお互い顔を合わせて笑い出してしまったの。
「あの……私また変な事を言いましたか?」
「ははは……いや、それでいいんだよ。そのままの月菜さんでいれば、柚瑠木の方が勝手に振り回されてくれるから」
その通りだと思うわ、月菜さんがこの調子ならわざわざ何かしなくてもきっと大丈夫。真面目な柚瑠木さんの方が、きっと空回りすることになるでしょうよ。
笑いながら時計を見ると、そろそろ彼女を部屋に帰した方がよさそうな時間だった。
「……月菜さんは天然の魔性なのね、これじゃあ柚瑠木さんが冷静沈着なままでいられないのも無理ないわ。さて、そろそろ月菜さんを部屋まで送らなきゃね」
聖壱さんに後片付けは任せて、月菜さんを部屋まで送っていく。まだ少し不安は残っているようだったけれど、彼女の顔はうちに来た時よりもずっと落ち着いて見えた。