ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
柚瑠木さんだって本当はもうその事を分かってるはず。彼が月菜さんに本当の事を言えないままでいるのも、本当は彼女が自分の傍から去っていくのが怖いからなのだと思う。
でも月菜さんならきっとそんな事で柚瑠木さんから離れたりしないのに……
「柚瑠木さんは認めないけないでしょうけれど、きっともう手遅れよね?」
「ああ、そうだな。覚悟を決めている人間がいつだって一番強いさ」
そう言って微笑み合う、早くこの幸せをあの二人も知って欲しいと思いながら。まさかこの時に二人の関係が今までで一番気まずいものになっているなんて、私達は何も知らないままでいた。
その数日後……
「柚瑠木さんと連絡が取れない?」
「ああ、連絡が取れないというか多分アイツは俺を避けているんだと思うんだ」
聖壱さんの話では、それは月菜さんが家に来たあの日から。つまり柚瑠木さんと聖壱さんが電話で喧嘩してから連絡が取れなくなったらしい。
月菜さんからはいつもと変わらず、メッセージが送られてくるので何かあったとかではないはず。だけど彼女の様子が少しおかしかったのも気になっていて……
「私、今日の料理教室で月菜さんに話を聞いてみるわ」
そう思って仕事を終えてバッグを持つと、急いで会社を出ようとする。だけど急な眩暈に襲われて、そのまま通路で屈み込んでしまう。
「香津美!?」