ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
もちろん真澄さんという人物が柚瑠木さんとどういう関係にあるのか気にならない訳じゃない。だけどそれを勝手に聞き出そうとは思わない、彼らが話してくれるのを待つことくらいはできるから。
「昔の私なら、きっと何としてでも聞きだそうとしたかもね……」
自分でも相当我が儘な性格をしている自覚はある、素直な妹に比べて性悪な姉だと陰で囁かれていたことも本当は知っていた。
昔からなんでも上手く出来る方ではあったから、いつの間にかプライドばかり高い可愛くない女になってしまっていたの。自分の意見は何でも通って当たり前だと、思うがままに振舞ったりしていた。
だけどほのかな好意を抱いた見合いの相手にはこっ酷く振られて、私に舞い込んできたのは愛の無い契約結婚だった。
でも聖壱さんとの結婚生活で私は変われたと思う。彼がこれ以上ないというほど私を愛して大切にしてくれたから。こんな私にも心の余裕が出来たのよ。
「香津美、ここにいたのか」
「ええ、ちょうどコーヒーを淹れ終わった所なの。聖壱さんも一緒に飲むでしょう?」
コーヒーを乗せたトレーをリビングへと運んでいると、聖壱さんの小さな呟きが聞こえてきた。
「俺の妻は本当にいい女だな」
違うわ、貴方が私を素敵な妻にしてくれているの。私は聖壱さんに釣り合う相手でいたいの、これからもずっとね。
この夜、私達は柚瑠木さんと月菜さんの二人の素敵な未来を想像しながら静かな時間を過ごしたのだった。