ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~


 結局、《《なほ》》と父の二人にレジデンスまで送られることになってしまった。事情を知らない父は私が具合が悪いのかと心配そうにしていたけれど……
 一緒に暮らしていた時はそれが当たり前だと思っていたのに、離れてみるとどれだけ家族が私の事を気遣っていてくれているのかが分かる。

「いいですか、姉さん。ちゃんと義理兄さんに自分で伝えるんですよ?」

「しつこいわね、何度も言わなくてもちゃんと分かってるってば」

 部屋のドアの前までしっかりとついて来たなほに念を押されて、私は妹に早くロビーで待つ父の所へ戻るように手を振ってみせる。
 私たちの事を考えて言ってくれているのは嬉しいけれど、こっちだって緊張と不安で落ち着かないのよ。

「……大丈夫ですよ、姉さん」

「何がよ?」

 そっと私の手を取って優しく撫でるなほは、いつもの無表情ではなく口元に微かな笑みを浮かべている。そのままゆっくりと私を見上げて……

「姉さんの今の不安も焦りも、そして期待も全部義理兄さんが受け止めて包んでくれます。もう一人で不安になる必要は無いんです。それに私と父や母だって姉さんの力になる事は出来るんです、だから……」

「なほ……」

 口下手な妹がこんなに喋るのは珍しかった。それだけなほが私に必死で伝えようとしてくれているという事、それが嬉しくて……

「もういいわ、身体を冷やしちゃいけないし私は部屋に入るから」

「……はい。そうしてください」

 玄関の扉から一歩下がるなほ、扉を閉める前に少しだけ振り返って……

「ありがとう、その気持ちだけで十分嬉しいわ。結果が分かったらメッセージを送るわね」

「……はい!」

 なほの少し大きな返事が聞こえると同時に、私は静かに玄関の扉を閉めた。


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