ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
リビングの灯りを点けると冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出しグラスに注いだ。そのままソファーへと腰を下ろして、ごくごくとそれを飲み干す。冷えた水で喉を潤せば、少し気持ちも落ち着いてくるような気がした。
「夕飯の支度しなきゃ……」
そう思うのに、何となく身体はまだついてこないようで。私は空になったグラスを持ったままソファーに座り込み動けないままでいた。
そうしているうちにいつの間にか時間だけが過ぎて……ガチャリと玄関の鍵が開かれる音がした。
いつもなら夫である聖壱さんを玄関まで迎えに行くのに、これから彼になんて話そうかと迷っているせいでそれも躊躇ってしまったの。
もちろん聖壱さんがそんな私を不思議に思うのは当たり前で、少し速足で廊下をこちらに向かって歩いて来ている音がする。
そのまま少し乱暴にリビングの扉が開かれて……
「香津美? どうした、具合でも悪いのか?」
私がソファーに座り込んでいるのを見つけると、聖壱さんはすぐに私の傍へ。私が何か言う前に手のひらで熱が無いかを調べ、顔色を確かめた。
「大丈夫よ、どこも調子が悪いとかじゃないの。ただちょっと実家に帰っていたから、疲れて体がだるいだけ」
「香津美が実家に……?」
私が実家に滅多に帰らなかったからか、聖壱さんは少し戸惑ったような表情をした。別に私は家族と仲が悪いわけではないのだが、彼は心配なのかもしれない。
「それでね、今日私は聖壱さんに大事な話が……」
「俺は嫌だ!」
……え? 私は一瞬、聖壱さんに何を言われたのか理解出来なかった。今、彼は私にハッキリと「嫌」だと言わなかった?