ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
ドキドキ落ち着かない胸を誤魔化しながら検査を済ませてお手洗いから出ると、聖壱さんが真剣な表情で結果を伝えられるのを待っている。
実は私もまだ結果を確認していない、今も判定枠を隠したままの検査薬を持っている。
「……二人で一緒に確認するの、いいわね?」
「ああ。くそ、どんな大事な会議よりも緊張するな」
「当たり前でしょ? 私だって今までで一番胸が苦しいくらいよ。それじゃあ、いくわよ……三、二、一」
判定枠を塞いでいた手を離すとそこにははっきりと一本の線、そして少し薄いけれど間違いなくもう一本の線も出ていた。
という事はやっぱり私のこのお腹の中には……
「なあ香津美、俺はマジで父親になれるのか……? 俺と香津美の子供がここに……」
聖壱さんはそっと膨らみも無い私のお腹に手で触れる。
どうやら聖壱さんもこの結果を見たことで、私の妊娠をしっかりと受け止めてくれようとしているようだった。
私が母親になる事も聖壱さんが父親になるのも、どこかぼんやりとしていて現実味がない。それでもお互いの胸の中は暖かい感情で満たされていくのだから、不思議だったりするけれど。
「明日、ホスピタルできちんと調べてもらうわ。仕事はちょっと遅刻することになるけど……」
「無理はしなくていい。仕事は香津美の分も俺が頑張るし、それで駄目なら沖名を扱き使えばいいだけだから」
聖壱さんは私とお腹の子供の事を心配してそう言ってくれるけれど、私は彼の提案に首を振ってみせる。そんな事は私は望んでいないのだ、と。