ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「はは、月菜さんはやっぱり天然な所があるな」
私たちの会話を聞いていた聖壱さんはそう言って楽しそうな顔をする。私もゆっくりと微笑んで彼の淹れてくれたハーブティーに口を付けた。
ただいつもならリラックスできるその香りに少しだけ違和感を感じてしまったのだけど。
「そうね、そういうところも彼女の魅力なのだとは思うけど。あの柚瑠木さんを散々振り回してくれるから、気分もいいしね?」
月菜さんの夫である柚瑠木さんの余計な一言で、聖壱さんにとんでもないお仕置きをされた恨みは絶対忘れないんだから。冷徹男が戸惑う様子をこれからも楽しませてもらうつもり。
そんな意地の悪い事を思い浮かべて、ハーブティーと一緒に用意されたドーナツに手を伸ばした。
「そうだな。ところで香津美……おい? 香津美!」
話の途中で急に吐き気が込み上げてきて、手を口で押えてしまう。あまりに性格の悪い事を考えていたので、罰が当たったのかしら?
すぐにバケツを用意してもらって、少しの間ジッとしていると吐き気はゆっくりと治まっていった。
「もしかして悪阻か?」
「え? ああ、そう……これが悪阻なのね」
さすがに罰ではなかったらしく、落ち着いてからスマホで調べてみると確かに初期の悪阻の症状のようだった。