食リポで救える命があるそうです
・
・【食事好き】
・
「これが『優男が野菜好きすぎる件について』で主人公の更田佐々が食べていた越後野菜サラダか……!」
私は目の前に置かれた輝かしいナスのサラダに心が躍っていた。
一口にナスと言ってもいろんな形があるわけで。
細長いナス、丸々と太ったナス、さらには白いナス、それに新潟名物のかんずりという柚子と麹と唐辛子の調味料を使ったドレッシングが掛かっている。
地の野菜を地の調味料で戴く、それはもはや食事というより前衛芸術だ。
特にかんずりドレッシングで赤く染まった白いナスは紅白めでたく輝いている。
芳醇な柚子の香りがサラダをまとめ上げ、ぐっとさわやかにしている。
我慢している必要も無いので、写真も撮らずに、一心不乱でサラダをがっつく。
ナスは素揚げされていて、果肉がとろとろに溶け出して、そのまま頬も落ちてしまいそう。
そのとろとろとは対極にある、新潟名物の米粉、で、作られたパリパリのトルティーヤは歯ごたえが楽しい。
この緑が映える葉物野菜はプチヴェールといって、芽キャベツとケールを掛け合わせた野菜らしく、栄養抜群らしい。
苦みは一切無く、噛むとキャベツ系統の甘みが口いっぱいに広がり、どんどん食べたくなる。
味はキャベツ系で栄養素が青汁などに入っているケールというところだろうか。
私は一気に越後野菜サラダを食べきって、すぐさまお店をあとにした。
まるで『優男が野菜好きすぎる件について』で主人公の更田佐々のように。
でも決して私はサラダだけが好きなわけではない。
魚も肉も、何でも食べる。
私が好きなのは漫画と料理。
特に漫画で紹介された料理を食べることが好きなのだ。
更田佐々はあの店でサラダしか食べなかったので、だから私もサラダしか食べなかったのだ。
お金は有限だ。
どんなに稼いでも使ったら無くなってしまう。
さらに言うと、私はまだそんなに稼げてもいない。
高校生になりたてで、やっとバイトで雇ってもらえる年齢になった。
「早く県外遠征もしたいなぁ」
そう思いながら、私は夜道を走っていた。
食べたら太る。
それは当たり前だ。
だから私は食べたら必ず運動するようにしている。
というかぶっちゃけ食べなくても動くように心掛けている。
太ることが私は嫌いだから。
「だからってモテるわけじゃないんだけどねぇ……」
リュックサックの『マジ肉食! 裸足の剣くん!』ストラップが走って揺れている音がする。
もしモテたいなら、漫画のストラップは勿論、そもそもリュックサックじゃないし。
でも私が中学生の頃から使っているお気に入りのリュックサックは衝動買いに適しているし、剣くんのグッズを近くで感じていたいし。
だからこの細身をキープするのは、ただの私の自己満足だ。
食事だって自己満足だし、ストラップだって自己満足だし、そもそも人生って全部自己満足でしょ?
自分が満足すればいいだけだから、別にモテなくたって全然興味すらないし。
現状に満足していれば何も文句は無い……んだけども、残念ながら現状には満足していない。
高校では話が合わなくて全く友達ができない上に、両親はいわゆる毒親で、毎日何らかの命令を言われる。
バイトしていることを話したら、バイトで稼いだお金を家に入れろと言い出している。
高校生なんだからむしろお小遣いを欲しいくらいなんだけども。
それならいっそのこと、遠くの、北海道とかの高校を選べば良かったかなと一瞬思ったけど、いやでも漫画飯は言うても東京の店が一番出てくるからなぁ……。
と、頭の中が暗くなってしまったその時だった。
急な光が目の前に飛び込んできてビックリした。
否、急な光に飛び込んでしまった。
そう、私は左右の確認を怠り、大型トラックの前に出ていたのだ。
気付いた時はぶつかる瞬間で、あっ、死ぬんだと思った。
まだ剣くんの最終回を見ていないのに、私が最終回になってしまった。
・【食事好き】
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「これが『優男が野菜好きすぎる件について』で主人公の更田佐々が食べていた越後野菜サラダか……!」
私は目の前に置かれた輝かしいナスのサラダに心が躍っていた。
一口にナスと言ってもいろんな形があるわけで。
細長いナス、丸々と太ったナス、さらには白いナス、それに新潟名物のかんずりという柚子と麹と唐辛子の調味料を使ったドレッシングが掛かっている。
地の野菜を地の調味料で戴く、それはもはや食事というより前衛芸術だ。
特にかんずりドレッシングで赤く染まった白いナスは紅白めでたく輝いている。
芳醇な柚子の香りがサラダをまとめ上げ、ぐっとさわやかにしている。
我慢している必要も無いので、写真も撮らずに、一心不乱でサラダをがっつく。
ナスは素揚げされていて、果肉がとろとろに溶け出して、そのまま頬も落ちてしまいそう。
そのとろとろとは対極にある、新潟名物の米粉、で、作られたパリパリのトルティーヤは歯ごたえが楽しい。
この緑が映える葉物野菜はプチヴェールといって、芽キャベツとケールを掛け合わせた野菜らしく、栄養抜群らしい。
苦みは一切無く、噛むとキャベツ系統の甘みが口いっぱいに広がり、どんどん食べたくなる。
味はキャベツ系で栄養素が青汁などに入っているケールというところだろうか。
私は一気に越後野菜サラダを食べきって、すぐさまお店をあとにした。
まるで『優男が野菜好きすぎる件について』で主人公の更田佐々のように。
でも決して私はサラダだけが好きなわけではない。
魚も肉も、何でも食べる。
私が好きなのは漫画と料理。
特に漫画で紹介された料理を食べることが好きなのだ。
更田佐々はあの店でサラダしか食べなかったので、だから私もサラダしか食べなかったのだ。
お金は有限だ。
どんなに稼いでも使ったら無くなってしまう。
さらに言うと、私はまだそんなに稼げてもいない。
高校生になりたてで、やっとバイトで雇ってもらえる年齢になった。
「早く県外遠征もしたいなぁ」
そう思いながら、私は夜道を走っていた。
食べたら太る。
それは当たり前だ。
だから私は食べたら必ず運動するようにしている。
というかぶっちゃけ食べなくても動くように心掛けている。
太ることが私は嫌いだから。
「だからってモテるわけじゃないんだけどねぇ……」
リュックサックの『マジ肉食! 裸足の剣くん!』ストラップが走って揺れている音がする。
もしモテたいなら、漫画のストラップは勿論、そもそもリュックサックじゃないし。
でも私が中学生の頃から使っているお気に入りのリュックサックは衝動買いに適しているし、剣くんのグッズを近くで感じていたいし。
だからこの細身をキープするのは、ただの私の自己満足だ。
食事だって自己満足だし、ストラップだって自己満足だし、そもそも人生って全部自己満足でしょ?
自分が満足すればいいだけだから、別にモテなくたって全然興味すらないし。
現状に満足していれば何も文句は無い……んだけども、残念ながら現状には満足していない。
高校では話が合わなくて全く友達ができない上に、両親はいわゆる毒親で、毎日何らかの命令を言われる。
バイトしていることを話したら、バイトで稼いだお金を家に入れろと言い出している。
高校生なんだからむしろお小遣いを欲しいくらいなんだけども。
それならいっそのこと、遠くの、北海道とかの高校を選べば良かったかなと一瞬思ったけど、いやでも漫画飯は言うても東京の店が一番出てくるからなぁ……。
と、頭の中が暗くなってしまったその時だった。
急な光が目の前に飛び込んできてビックリした。
否、急な光に飛び込んでしまった。
そう、私は左右の確認を怠り、大型トラックの前に出ていたのだ。
気付いた時はぶつかる瞬間で、あっ、死ぬんだと思った。
まだ剣くんの最終回を見ていないのに、私が最終回になってしまった。