飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
契約結婚……俺としてくれますよね?
「千夏、お前みたいな娘にはもったいない程のお話なんだ。決して相手の機嫌を損ねたりしないように気を付けなさい」
この人の言葉は娘に言い聞かせるというより、ほとんど命令に聞こえる。自分の隣に私を立たせるのが心底不満でしょうがないって顔をしてるの、そんなの私だって同じ気持ちなのに。
今まで散々隠してきた娘をこうして外に出すと言う事は、この話は二階堂の家にとって余程大事って事なんでしょうけれど。
たとえどんな人が私の相手になるのだとしても、この家に隠されているだけの人形のような私に拒否する権利なんてない。だから……
「はい、お父様……」
ただ静かに返事をして頷いてみせる、そうしなければこの人がもっと不機嫌になるのは目に見えているから。
「全く、どうしてよりにもよってこの娘を選ばれたんだか。こんな娘よりも私の娘たちの方がよっぽど……!」
ええ、それが貴方の本音でしょうね。私のような後ろめたい存在より、大事な本妻の娘たちに良縁が来なければ納得出来ないんでしょう?
父とって私は娘ではない、ずっと前からこの人の不手際を形にしただけの存在。
「ご主人様、そのような言い方は……」
周りの目を気にした使用人が小声で止めに来る、普段は見てみぬふりだというのに。義理の母は予定していたかのように、昨夜から体調を崩してここには来なかった。
何もかも私が思っていた通りの展開、後はこの部屋にやってくる未来の夫の手を取るだけでいいはず。
……何もかも諦めて、ただぼんやりと目の前の扉が開くのを待っていた。
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