飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「あら、ごめんなさい? 普段いない人がここにいるから気が付かなかったの」
言ってることは間違っていないが、今絶対わざとぶつかって来たでしょう? 私の事を疎ましく思っている家族からこんな扱いを受けることは珍しくないけど、今日はいつもより酷い……
昨日の兄や姉の会話も少し気になるし、なんだかこの屋敷の人間全員がピリピリしてる気がする。
「ねえ、昨日何かあったのか聞いてない?」
「さあ、私達は何も聞かされてませんから」
駄目もとで若い使用人に聞いてみたけれど、家族全員に嫌われている私に教えてくれるわけもなく。話もしたくないと言わんばかりの態度でさっさと部屋から出て行った。
父に見つかると面倒なので、欲しい情報を手に入れる事も出来ないまま自室に戻る。
「どうでしたか、何か話は聞けました?」
「分かってるくせに、どうせ私に話をしてくれるような勇気のある使用人は貴女くらいよ」
広いこの屋敷で私の唯一の味方、休みの日まで私の心配をして顔を出してくれるような人。たまに意地悪な言い方をするのが、欠点よね。
「ふふふ、どうやら昨日この屋敷に二階堂にとって大きな取引先の方が来られたみたいです。いいですか?何でも……この家のどなたかとの縁談の話とか?」
縁談の話? だからに兄や姉があんなに騒いで……でも、それなら。
「どうでもいい事だったわね、私には関係ない話だもの」
わざわざ聞きまわって損をしたわ、この家にそんな話が来るとしたらきっと姉か妹だものね。私はやれやれというように続きの話を聞き流し、次に製作するアクセサリーについて考えていた。