飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
いつもの笑顔じゃなかった、少し硬い表情で真剣な目をしてそう聞いてくる櫂さんから目を外せない。
今まではこんな時には冗談だって私から離れてくれたけど、今の彼はそんな様子も見えな無かった。
……本当に櫂さんは私とキスする気なの?
私の返事をじっと待つ櫂さんは、それ以上何も言ってはこない。つまりここから先に進むのも、ストップをかけるのも私次第という事?
「櫂さん、私……あの」
今の気持ちを上手く言葉に出来ない。櫂さんとのキスが嫌なわけじゃない、ただまだ私にそれを言葉に出来るほどの勇気がないだけ。
それでも私が思っている事を櫂さんに伝えたくて、悩んだ末に私はギュッと瞳を閉じる。
きっとドラマや映画のシーンの女性のように綺麗な顔はしてなかったと思う。緊張でガチガチで力も入って可愛くなかったはずなのに……
「千夏……」
優しく名前を呼ばれ、唇に柔らかな感触。想像していたよりも冷たいけれど、これが櫂さんの唇の温度なのかと思うと胸がドキドキと音をたてている。
啄むように何度も触れるそれに、私は何も出来ないままその感触だけに気を取られてしまっていた。
「櫂さん……」
私はなんて幸せなんだろう。こうして私を大事にしてくれる旦那様と、こんな甘い時間を過ごしてる。
櫂さんが与えてくれた場所で、幸せと安らぎに包まれて心まで彼に酔いしれてしまいそうになっていた。