飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「ではここにサインをお願いします、名字だけでいいので」
そう言われて渡されたボールペンでサインすると、すぐに伝票を破り荷物を手渡された。それにしても私宛の荷物なんて一体何だろう?
そう思って送り先を見ると、そこに書いてあったのは二階堂という文字。思わず心臓がドクンとなった。
「それじゃあ、失礼しまーす」
配達員の男性はそんな私の様子に気付くことなく、間延びした喋り方で玄関から出て行った。私は震える身体を何とか動かして、その荷物をリビングまで運んでいく。
綺麗な白い段ボール、伝票に書かれた新河 千夏の文字が私を一気にあの家に連れ戻していくような気がした。
「大丈夫、今の私は櫂さんの妻。もうあの家に縛られてはいないはずよ」
そう言葉にすることで、自分を保たなければならない。どんなに過去だと言っても、あの家で私が受けた扱いを忘れることなど出来ないのだから。
ペン入れからカッターを取り出して、段ボールを開ける。何が入っているのかと恐る恐る覗いてみると、そこには柔らかそうなクマのぬいぐるみと小さなオルゴール。
……そして【二階堂 千夏様】と書かれた真っ白な封筒。嫌な予感がした、見られない中身の封筒に、二階堂 千夏と書かれた意味は何なのか。
私は先に封筒を取り出して、その後クマのぬいぐるみとオルゴールを取り出した。手に取った瞬間に流れ出すメロディーは、誰でも知っているほどの有名な曲。
「これって、別れの……メロディー?」