飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


 なぜこんな曲を新婚の私に送ってきたのだろうか? いや、あの家族ならそれくらいの事はするかもしれない。特に兄や姉は私と(かい)さんの結婚に不満を持っていたから。
 
「早く別れろ、もしくは別れてしまえ……ってところかしら。だとすれば、この二階堂(にかどう) 千夏(ちなつ)と書かれた封筒もそうなのでしょうね」

 二階堂の名を名乗れば、二階堂に相応しくないと馬鹿にされてきた。それなのに新河(しんかわ) 千夏になったら今度は二階堂 千夏に戻れとでもいうの?
 なんて身勝手な人たちなんだろう、どこまでも私を一人の人間として扱おうとはしない。

「だとしたら、このクマは何なんでしょうね?」

 ふわふわとした毛のクマのぬいぐるみは一見可愛いだけだが、あの人たちが送ってきたということはこれにも何か意味があるはず。
 だけど何度見てもおかしなところを見つけきれなかった私は、それを棚の上に置いた。

 最後に残って白い封筒は私の名前以外は何も書いていない、ハサミで封を切り中身を確認すると数枚の便せんが入っている。
 大きく息を吸って、封筒の中から便せんを取り出してみる。この中にどんなことが書いてあるのかと、不安で胸がいっぱいになっていた。

『あなたの幸せなんて誰も願っていない』

 綺麗な字だった、気性の荒い兄や姉の字とは違う……でも、どうして?

梓乃(しの)……」

 それは今まで一番私を馬鹿にする態度をとったりすることのなかった、一番下の大人しい妹。その梓乃からの短い手紙だった。


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