飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


「おかえりなさい、(かい)さん! お仕事お疲れ様でした」

 いつも通りの時間に帰ってきた櫂さんを玄関で出迎える。いつも通りと言ってもすでに夜の九時を過ぎていて、彼も疲れているはずなのに……

「ただいま、千夏(ちなつ)。早くお帰りのキスをちょうだい?」

 少し甘えたように言われて、私はたちまち茹蛸の様に赤くなる。櫂さんのその可愛らしい言い方と、また自分からキスをしなければならない恥ずかしさで。
 けれどキスをしなければ櫂さんは玄関から動いてくれない、早く彼に休んで欲しい私は朝と同じようにチョンと触れるだけのキスをした。

「早く着替えて来てください、夕飯の準備は終わってますから」

 と言ってもほとんどが通いの家政婦さんに作ってもらったもので、私はほんのちょっとお手伝いをしただけ。それでも毎日の日課のように櫂さんは……

「今日はどれが千夏の作った料理?」

 着替えてすぐに食卓に着いた櫂さんにニコリと笑顔で聞かれてしまう。そう、彼は毎日私の作った料理から食べるようにしてくれているのだ。必ず「美味しい」という感想込みで。

「今日は、この蛸と春雨の酢の物を……」

「これか、今日のも美味しそうだな」

 今まで料理などしてこなかった私には簡単なものしか作れない、それなのに櫂さんはいつもそれを嬉しそうに食べてくれて……


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