飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
手首を掴まれ引き寄せられると、そのまま櫂さんの腕が私の腰に回って簡単に彼の脚の上に乗せられた。椅子に座ったままなのになんて器用な!
こんなことをして何をする気だと焦っていると、櫂さんは小鉢と箸を持ち直しニッコリと微笑みこう言った。
「はい、あーんして?」
「……はい?」
口の前には箸で摘ままれた酢の物の蛸、まさかこれを櫂さんから食べさせてもらえって事?
こんな体勢でそんな事をしなきゃならないなんて、あまりにも恥ずかしい。櫂さんはいつも私が恥ずかしがって嫌がることばかりをさせようとしてくる。そんな千夏が可愛いからいけないのだ、と言い訳して。
「出来るよな? いつも千夏が俺にしてくれるから、今日はお返し」
「してくれるって、櫂さんが無理矢理させるんじゃないですか! やらなきゃいけないような状況にして」
まるで私が自分から進んでしているような言い方をしないで欲しい。いつもいつも櫂さんに上手く言いくるめられているだけじゃない!
そんな私の心の中を読んでいるかのように櫂さんは……
「そうか? でもやってくれている時の千夏も結構楽しそうな顔をしてるけど?」
「そんな楽しくなんか……その、少しだけしか」
口を開けて待っている櫂さんが雛鳥みたいで可愛いとか、美味しそうに食べてくれるのが嬉しいとか少ししか思ってませんから!