飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「いいから、ほら早く?」
何もよくないのに、櫂さんは早く口を開けろと急かしてくる。そんなニコニコな笑顔を見せられると、結局断れなくなってしまう自分が憎い。
いつもいつも櫂さんに負けている気がして悔しいのに、この笑顔一つで全部帳消しにしてしまうから狡いわ。
「こ、これでいいですか?」
恥ずかしい気持ちを何とか我慢して、櫂さんに向かって口を開ける。今日は私が雛鳥にさせられてる気分だ。
「はい、あーん。うん、千夏はそういう事をしても可愛いな」
満足そうな櫂さんと不満げな表情の私、それでも周りから見たらきっとバカップルにしか見えないのでしょうけれど。まさか自分がこんな甘い結婚生活を送ることになるなんて……
「そうやって可愛いばっかり言わないでください、もう恥ずかしくて死にそう」
「ダメ、俺は色んな千夏を見たいから。それに可愛い君を可愛いと言って何が悪い? 綺麗だと言われたほうが嬉しいならそうするが?」
そういう事じゃないのに、櫂さんは真面目な顔でそんなことを言う。こうやって褒めて甘やかして砂糖漬けのようにして、櫂さんは私をどうするつもりなの?
このままじゃ私、櫂さん無しでは生きていけなくなってしまうかもしれない。そんなことを真剣に心配してしまいそうになった。