飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「へえ、お洒落なオルゴールだね。確かにプレゼントにもピッタリだ、流れる曲が別れのメロディーでさえなければの話だが」
私の部屋に入ってすぐに櫂さんが目をつけたのは棚の上に置いたオルゴール。彼は優しい雰囲気のままだが別れのメロディーが流れ始めた一瞬だけ、その視線を鋭いものに変えた。
新婚の私たちにこのオルゴールを贈った意味なんて一つしか考えられない。
「俺たちに早く別れろ、ってことなんだろうな。分かりやすい嫌がらせだ」
櫂さんは気にしないかもしれないが言葉にされると、やはり私が櫂さんに釣り合っていない所為ではないかと不安になる。このオルゴールを私宛にしたということは、私に身を引けと言っているのだと。
そんな私の気持ちに気付いてか、櫂さんはそっと私の肩を抱いてくれる。こうしてくれる優しさに私はどれだけ救われているか……
「これは俺が回収する、変な仕掛けがないかを調べてもらう必要もあるしな」
「変な仕掛け、ですか?」
確かにオルゴールは機械仕掛け、何か変わった何かが混じっていても私たちでは分からない。そう思っていると、櫂さんは今度はベッドに移動してクマのぬいぐるみを手に取る。
「千夏、カッターを持っているか?」
「え? ええ、ちょっと待っててください。机の引き出しに……」
そう言って一度櫂さんの腕から離れ、引き出しからカッターを取り出して櫂さんの手に渡す。すると彼は迷わずクマのぬいぐるみのお腹の部分にそれを突き刺し、そのまま縦に引き裂いてしまう。