飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「か、櫂さん!?」
驚いた私に「大丈夫」とだけ彼は言うと、そのままぬいぐるみのお腹に手を入れ何かを取り出した。手のひらに載って小型の機械のようなもの、それは何度か似たようなものをテレビで見たことがある……
「まさか、盗聴器……?」
「まあ、多分そうだろう。これも調べてもらわなきゃな」
そう言って櫂さんは先にオルゴールを入れた紙袋に、盗聴器をぬいぐるみごと放り込んだ。
まさかあんな大人しい梓乃が私にこんな事をしてくるなんて、今まででは考えられなくて一気に鳥肌が立ってしまう。
私はこれほどまでに彼女に嫌われて、憎まれれていたのだろうかと。
「他には? 今日届いたもので、まだ何か俺に見せていないものがあるんじゃないか?」
「え、あ……」
残っているのは梓乃からの手紙だけ。でもそれを見せるということは櫂さんに梓乃がこれらの嫌がらせをしているとバラしてしまうことになる。
まだ私は迷っていた、妹である梓乃の事を櫂さんに話すべきかどうか……
「千夏、正直に話してくれ。小さな悪意でも放っておけば、いつか大きな何かを起こす事もある」
櫂さんは純粋に私の心配をしてくれているだけだと分かってる。もし彼に梓乃の事を話しても、櫂さんがあの子を傷付けたりはしないとちゃんと信じなければいけない。
私は誰よりも一番に櫂さんを信じ、彼に嘘なんかついてはいけないんだわ。
「櫂さん、ちょっと待ってて。見て欲しいものがあるの……」
私は自分の机の引き出し、奥深くに隠しておいた梓乃からの手紙を取り出し櫂さんに手渡した。