飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「『あなたの幸せなんて誰も願っていない』か。で、これはいったい誰から?」
封筒には私の名前が「二階堂 千夏」と旧姓で書かれているが、差出人の記載はない。便せんにも同じように私へのメッセージだけが残されているだけ。
さすがに誰からの手紙かまでは櫂さんにも分からないらしく、彼は真剣な表情で私に問いかけた。
ここで答えなければ梓乃がこんな事をしたことは誰にも気付かれない、私がきちんと二人で話をすれば梓乃を説得できるかもしれない。
だけど……
「櫂さん、もし私がこの相手とは私が話し合いたいと言ったら?」
「千夏、俺はあの家の人間と君が関わって良い事があるとは思えない。もしこの先、千夏に何かあれば俺は君の身内であっても容赦しないよ?」
つまり、櫂さんは私が梓乃と話をすることには反対だという事らしい。
彼の言う通り、私が二階堂の人間と話をしたところでまともに聞いてくれる可能性だって低い。それなら櫂さんに頼んだ方がいい事は十分わかっているけれど……
「櫂さんの言いたいことは分かります。でも私の家族の事だから自分で何とかしたい、それは我儘になりますか?」
真っ直ぐに櫂さんを見つめてそう言うと、彼も決して私から視線を逸らさない。まるで私の覚悟を試しているかのような彼の視線を瞬きも我慢して受け止めた。