飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「千夏は本当に俺がそんな事を許可すると思ってるの? そんな我儘なら俺だって言いたい、君をあの家族に会わせたくないって」
櫂さんも私も真剣だった。どうしても自分で梓乃を説得したい私と、妻である私を傷付けない事を優先したい櫂さん。
彼の気持ちは嬉しいし、守ってもらいたい気持ちももちろんあるけれど……
「ちゃんと分かってます、私が櫂さんが望んでない事をしようとしてるって。でもあの子が私にこうして感情をぶつけてくれたのは初めてなんです。だから……!」
「あの子? ふうん、つまりこの手紙の差出人は千夏の妹ってことだよな?」
しまったと思ったがもう遅かった、勘のいい櫂さんは私が梓乃を「あの子」と呼んだだけで誰なのか気付いてしまったのだ。
このままでは私が梓乃と話をする前に櫂さんが彼女を問い詰めてしまうかもしれない。そう思った私は――――
「もし彼女が私の話を聞いてくれなければすぐに櫂さんを呼びます、ですから少しだけ梓乃と向き合って話をさせてもらえませんか?」
約束しますと言うように、櫂さんの手を強く握って頼み込んだ。そんな私を櫂さんが複雑な表情で見ている事は分かっていたが、彼が「分かった」と言ってくれるまで止める気はなかった。