飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「千夏って意外と頑固だよな、そういう所も嫌いじゃないけれど」
そうなのかしら? 今までそんな風に言われた事は無かったけれど、櫂さんには素直に言いたいことを言えている気がする。
少しくらいの我儘も、彼は受け止めてくれるとどこかで分かっているのかもしれない。
まさか自分がそんな狡い手を使うことがあるとは思ってなかったけれど、つい櫂さんを下からジッと見つめてしまっていた。
そんな私の行動で、櫂さんの耳が赤くなっていることにまでは気付かなかったけど。
「お願いします、櫂さん! 代わりに私も櫂さんのお願いを一つ聞くって約束しますから」
自分だけが我儘を言っていいなんて思っていない。櫂さんが私にお願いするようなことがあるかは分からなかったが、それでも私に出来る事があればと思って。
すると櫂さんは少し考えた後、ニッコリ笑って……
「何でもお願いしていいのか? それなら悪くないかもしれないな」
「何でもって、私に出来る事ですよ? 出来ないことは約束できませんからね?」
櫂さんは笑顔だったが何か企んでいるようにも見えて、ちょっとだけ言った言葉を後悔しそうになった。
でも櫂さんだってそんな無茶苦茶な事はさすがに言わないわよね?
「ああ、もちろん千夏に出来る事だよ。いいや、千夏にしか出来ない事って言った方が正しいかな?」
「そ、そうですか……」
そんな櫂さんの言葉に何となく安心できないものを感じながらも、梓乃と話し合うために必要な事だと納得した。