飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
櫂さんが私の恥ずかしがる姿を楽しんでいるだけだと分かっているのに、こうして彼の思い通りの態度をとってしまうのが悔しい。
普段はとても優しいのに、こうして私を揶揄ってくるところは悪ガキのようだと思う。
「櫂さんって子供っぽいところがありますよね! 落ち着いた大人の男性だと思ってたのに」
「ああ、そうだよ。好きな子だって苛めたくなるようなガキみたいな男なんだ。もしかして嫌いになったか、千夏?」
そんなこと思ってないくせに。どう見ても余裕の笑みを浮かべる櫂さんの頬を両手でつかんで、思いきり伸ばしてやろうかと思う。
そんな事をしても彼を喜ばせる気がするから、止めておくけれど。
「それくらいでは嫌いになってあげません! そんな事よりも、どういう手を使うんですか? 梓乃は疑り深い性格だと思いますよ」
彼女は大人しかったがあの家で育ったこともあり、あまり人を信用するタイプではなかった。攻撃的ではない代わりに自己防衛が強いのだ。
そんな事を考えながら櫂さんを見ると、彼はあからさまにがっかりした様子で……
「そこが大事なのにそんな事で終わらせるのか、千夏は。一瞬喜んだ後に叩き落とされた気分だ……」
「……はい?」
時々櫂さんはよく分からない事で落ち込んでいる気がする。それが私が鈍感なせいだとは全く気付いていなかったのだけど。