飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
そんな風に落ち込んでいたのも一瞬のことで、櫂さんはすぐに立ち上がり顎に手をあて考えている。
そんな櫂さんの表情も結構カッコいいな、なんて思っていた私は、梓乃の事について考えるのをすっかり忘れてしまっていたのだけど。
「そうだな、何も考えずに呼び出してもきっと上手くはいかないだろう。千夏が知っている梓乃さんのついての情報を全部教えてくれないか?」
「はい、とは言っても私も梓乃について知っていることは少ないですけど」
私に嫌がらせをしてこなかったというだけで、私と梓乃はほとんど関わる事が無かった。お互いが相手をいない者として暮らしていたにすぎない。
そんな私が梓乃について分かる事と言えば……
「梓乃は甘いもの、特に和菓子に目がありませんでした。他にも魚料理が好きで、お寿司を頼む日は必ず二人前。それに野菜などの食材も気にして料理人に……」
「へえ? もしかして梓乃さんってさ……?」
ここには二人しかいないのに櫂さんはコソコソ話でもするように私を引き寄せ、そっと続きを囁いた。
「……え、あ! そうですね、言われてみれば!」
「そっか、じゃあ良さそうな手を思いついたな。千夏も協力してくれよ?」
ニヤリと悪い微笑みを見せる櫂さんだったが、やはり彼は頼りになると心から感謝の気持ちでいっぱいになった。
「はい!」