飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
契約結婚……にある問題と向き合って
「これはどういう事ですか? 二人で私を騙したんですよね、信じられない」
目の前に座っている妹の梓乃はいつもの冷たい無表情のままそう私達に言う、そんな彼女は焦ったり慌てたりした様子は少しも見せなかった。
こんな状況で優雅にお茶のカップを口に運ぶ梓乃は、私が思っていたよりもずっと図太い神経の持ち主だったのかもしれない。
儚げな容姿にずっと大人しい子だと思ったいたが、その瞳には彼女の意志の強さが感じ取れた。
「こういう手を取るしか君と話す機会を得られそうになかったのでね、少々強引な手段を使ったことは謝るよ」
余裕の表情を見せるのは梓乃だけではない、櫂さんも笑顔を絶やさずに彼女に明るく話しかけている。
そんな櫂さんをつまらなそうに一瞥した後、梓乃は皿に乗ったケーキをフォークで口に運ぶ。私達の会話よりもそちらの方が優先だと言うように。
私たちが今いる場所は今一番人気の、ホテルのスイーツビュッフェ。普通ではとても予約すら入れられないほどの人気ぶりに、櫂さんもかなり席を取るのに苦労したらしいけれど。
「よく分かりましたね、私が甘いものが好きだって。他の家族は全然気付いてもいなかったのに、まさか貴女にバレてるなんて……」
デザートを掬う手は止めず、小声でそう話す梓乃はどこか複雑そうな表情をしている。ほとんど関わりのない私しか気付かない、あの家族の関係がどれだけ薄っぺらかをこうして思い知らされる。