飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「話、してもいいのかな?」
私たちの会話を黙って聞いていた櫂さんが困ったような表情でそう聞いてくる。だがほぼ初対面の櫂さんに対しても梓乃は冷めた態度を変えることはなく……
「話なら後にしてください、せっかくのデザートが美味しくなくなるわ。どうせ私は逃げる気はありませんし」
きっと梓乃は嘘なんてつかないと思う。そんな事を出来る様なタイプでもないし、今も堂々としているから梓乃にも話したいことがあるのかもしれない。
戸惑う様子の櫂さんに私は「大丈夫」というように頷いて、デザートを食べる梓乃を眺めていた。すると……
「ただ座ってないで食べたら? 姉さんも義兄さんも」
「……え?」
梓乃の言っている言葉の意味が分からず聞き返すと、また彼女にムスッとした顔をされてもう一度繰り返された。
「デザートを食べたらって言ったのよ、姉さんと義兄さんも!」
間違いない、今梓乃は私の事を姉さんと呼んでくれた。それどころか櫂さんの事を義兄さんとも。
信じられないという顔をして梓乃を見つめると、気まずそうに顔をさらされる。もしかしたら彼女もテレているのかもしれないと思うと嬉しくなってくる。
「ねえ、梓乃。もう一回だけ言ってくれる? 私そんな風に呼ばれるの初めてだから……」
「は? いやよ、さっきだけで二回も呼んだし十分でしょう」
もしかして梓乃はツンデレというやつだったりするのかと櫂さんを見ると、彼も微笑ましそうに妹を見ている。
そんな視線に気づいたのか、ますます梓乃は不機嫌そうな顔をしてしまったけれど。