飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「笑ったりしないわ、梓乃がこんなに悩んでることを面白半分に聞くわけないでしょう?」
「別に悩んでなんか……」
そう言った梓乃の顔がクシャリと歪んだのを見て、ここまで彼女は随分無理していたんだと気付かされる。きっと二階堂の家の人間には相談も出来なかったんだろう、と。
本妻の子供として大切に育てられてきた梓乃でも、父や兄姉と本音で話すことは出来なかったのかもしれない。今の彼女を見ていればそれくらいは分かる。
「でも、貴女はこうしてここに来てくれた。私に何か話があったから、なのよね?」
梓乃はこう見えて計算高い所もある、ただ騙されてすんなり来たわけじゃないはず。何か彼女がここまで足を運ぶ理由があったに違いない。
なるべく落ち着いた声で梓乃に話しかけ、そっと彼女のテーブルの上に置かれたままの手の甲に触れた。ひんやりと冷たい梓乃の手、そんな様子を黙って見ていた彼女がやっと口を開いた。
「……姉さんは、今幸せ?」
「え? それってどういう……?」
今までにないほど真剣な梓乃の眼差しに、一瞬だけ言葉を失いそうになる。単純な問いかけなのに、嘘をついたり出来ない、そんな雰囲気が彼女との間にはあった。
なぜ梓乃がそれを今私に問いかけるのか、それはきっと今の彼女が一番不安に思っている事が……