飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「お義兄さんはただ惚気てるだけにも見えるけれど……まあ、そこまで言ってくれるなら少しだけ頑張ってみるわ」
「梓乃!」
梓乃が努力家だってことはちゃんと分ってるもの、少しなんてきっと嘘。彼女なりに一生懸命頑張るに違いない。少しはにかんだように笑う梓乃、それだけ私を信じてくれたことが嬉しかった。
そんな状況についテンションが上がってしまって……
「で、私は何をすればいいかしら? 何なら一度相手の方に話を聞いて……!」
「落ち着け、千夏。梓乃さんはまだ戸惑ってるし、ゆっくり気持ちが落ち着いてからそういう話をしないと」
梓乃に向かって前のめりになる私を、櫂さんが慌てて止める。嬉しくて暴走気味になっていた事に気付き、その上周りからの視線を感じ急いで席に座る。
どうして私っていつもこうなの? と俯いて顔を真っ赤にする私の背中を櫂さんがゆっくり撫でてくれる。こんな時だった櫂さんは呆れず私の傍に居てくれる、それだけで十分幸せなの。
「私ね、一人で会ってみようと思うの。高宮さんがどんな方なのかちゃん知ったうえで、自分で出来るだけの事はしたい。でも、それでも駄目だったらその時は……」
それは初めての梓乃からの頼み事。彼女が頑張ったうえで、それでも駄目なら手を貸してほしいと言ってくれた。そんなの返事は決まってる!
「出来るだけの事をするって、約束するわ」
その私の言葉を聞くと梓乃は「父がうるさいから」と言ってバックを持ってレストランから出て行った。もう少し話したかったが、父が面倒なのは私の知っているのでその日は私達もそのまま家に帰ったのだった。