飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


 いくら何でも私用の水着が用意してあるなんて絶対におかしい! しかも見た感じサイズ的には問題なさそうなところが余計に怖い。確かに私は標準体型だけれども、それでも……!
 渡されたブランドのロゴの入った袋から水着を取り出した手が震える。これを私に着ろっていうんですか、(かい)さん!?

「これ、ビキニ!? なんて布面積の少ないものを買ってきてるんですか!」

 出てきたのは白いフリルの付いたビキニ、パッと見は可愛らしいが身体の隠される面積はとても少ない。とてもじゃないが私にこれを着る勇気はない。
 手に持ったビキニを櫂さんに押し返そうとすると、彼はにっこり笑って……

千夏(ちなつ)がどうしても無理だっていうから妥協策を出してやったんだ、まさかあれもこれもダメだなんて言わないよな?」

 ズルい! きっと最初から櫂さんはそのつもりだったんだわ、私が最初は断ると分かっていてこういう手を使ったに違いない。自分に出来る事なら何でもするって言った手前、二度も断れないのを計算して!

「そんなこと言ったって、こんなの私にはっ! 恥ずかしいし、それに……」

 こうなるのが分かっていたらもう少しダイエットしてた、お腹の周りだって引き締めたりしなきゃって思ってたところだったのに。
 
「問題ないよ、千夏。君の身体を見るのは夫である俺だけなんだから」

 彼はとてもさわやかな笑顔でそう言うけれど。
 ……だから、それが一番問題なんじゃないですか‼ 櫂さんはちっとも乙女心を分かってない。


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