飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


 その言葉の意味が分からず、今の状況に呆然としていると彼は私の胸元を指して意地悪そうに笑う。その様子に嫌な予感がして(かい)さんが指す自分の胸元を見て悲鳴を上げそうになる。

「な、な……っ!」

 薄い生地から透けてしまった肌と水着、身体のラインを隠せないほど肌にぴったりはり付いた布。お湯で濡れてしまったシャツは私の望む役目を何一つ果たさないものになっていた。
 櫂さんにとって良かったのかもしれないが、私にとっては最悪の状態。このまま蹲ってしまいたい気持ちだったが、こうなったら負けてられないと用意されていたボディスポンジを手に取り櫂さんの後ろで膝立ちになった。

「……お背中、流しますね」

 櫂さんからシャワー受け取り丁寧に彼の背中をお湯で濡らしていく、想像していたより広い背中にドキドキするのを何とか誤魔化しながら。スポンジにたっぷりのソープを出して泡立てる、どうせやるなら櫂さんに気持ち良くなってもらわなきゃ。
 彼の首元から丁寧に泡を立てて洗っていく、広い背中部分は問題ないがその他はどうしたらいいのか分からない。試しにわき腹の方へとスポンジを滑らせる。すると……

「うひゃっ、ちょっとストップ! そこはしなくていい、もう十分だから!」

 大きな声を出して体を捩る櫂さんに私の方がポカンとなる。えっと、これって……もしかして? 櫂さんの弱点を見つけたことが嬉しくて、ついつい悪戯心が湧いてくる。
 私はスポンジをしっかりと持ち直し、後ろに下がろうとする櫂さんにジリジリと詰め寄っていく。

「まだですよ、きちんと綺麗にしなきゃダメでしょう? ねえ、櫂さん」


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