飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


 そう言って手を伸ばそうとすると、引きつった顔で焦って立ち上がる(かい)さん。これまで散々揶揄われて逃がしてやるもんか、と思って彼に手を伸ばした瞬間……

「引っかかったな、千夏(ちなつ)

「え?」

 彼の言葉を理解するより櫂さんが私の腕を捕まえてそのまま抱き寄せてしまう方が早かった。驚いているうちに抱きかかえられるような体勢にされ、そのまま一気に湯船の中へと沈められた。
 お湯で完全に濡れて透けたシャツ、その上剥き出しの皮膚に触れる櫂さんの肌の感触が生々しい……自分の後ろにはほぼ裸の櫂さんがいるのだと思うと緊張で声も出せなくなる。

「本当は水着なんていらないんだけど、それはまた今度でもいいか」

 今度って何? 櫂さんの中では私とのお風呂タイムは今回で終わりのつもりはないらしい。泡を流さすお風呂に入ったため、湯船は泡だらけ。
 こんな事までして二人でお風呂に入る意味なんてあるのかしら? 私はそう思うのに、櫂さんは鼻歌を口遊むほどご機嫌だ。
 ……櫂さんが、こんなに嬉しそうならもう一回くらいは許してあげようかな?

 結局……私が逆上せるまで櫂さんが湯船から出してくれなかったため、二度と一緒に入ってあげません! と、思いきり怒ってしまったのだけど。


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