飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「どういうことなんです、櫂さん? 梓乃があんなことを言い出したのには櫂さんも絡んでいるってことですよね?」
櫂さんが私に隠れて梓乃と連絡を取っているなんて思いもしなかった。梓乃は警戒心が強い方だしそんなに簡単に人を信じたりするタイプじゃない。それなのに私たちの契約結婚のことまで知っているなんて……
確かに私は今の櫂さんとの結婚に不満はないけれど、本当は契約なんて無ければとも思ってる。それを櫂さんに言うことは出来ないけれど、梓乃に同じように思って欲しくはなかった。
「そうだね、俺は梓乃さんに契約結婚について教えたよ。俺がそれを選んだ理由もね。でも梓乃さんが契約結婚を選ぶかどうかは彼女の自由だ、デメリットについてもきちんと伝えているし」
「それ、でも……」
そう言いかけて私は続きを言うのを止めた。さっき櫂さんは私も知らない彼が契約結婚を選んだ理由を梓乃に話したと言った。それが思いのほか胸の奥まで刺さってしまったような気がして。
確かに私からしつこく聞くこともしなかったけれど、そんなに簡単に他の人には話せるような事なんですか? それにもう一つ気になる言葉があって……
「デメリット、ですか……?」
「そう、デメリット。俺もそれに悩んでる、千夏には言えないようなことをね」
またズキンと胸が痛んだ、どうして私には言えないのか櫂さんの考えてることが分からない。契約結婚は二人でしているはずなのに、私はこの結婚の意味を何も知らない。
……本当にそれでいいの? 今のまま櫂さんの与えてくれる幸せだけを受け取ってるだけの結婚生活で?
心の中でもう一人の私がそう問いかけてるようだった。このままではいけない、櫂さんとのこの結婚の意味をきちんと知りたいとそう思い始めていた。