飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
人に料理を食べてもらう時ってこんなにドキドキするんだ。櫂さんと一緒には何度か作ったけれど、全部自分では初めて。やはり緊張してしまう。
調味料を間違えてないか、味付けは濃すぎてないかと色んな不安でいっぱいになってしまう。そんな事で櫂さんが私を嫌いになったりしないとは分かっているけれど。
「……どうですか?」
すぐに聞くべきじゃないって分かってるのに、私は櫂さんの一口目でそう訊ねてしまった。そんな私の必死な様子に気付いたのか、櫂さんはにっこり笑って頭を撫でてくれる。
「良く出来ました、すごく美味しいから千夏の分も食べて良い?」
「え? はい、どうぞ!」
そう言ってくれたことが嬉しくて、私は自分のお皿からオムレツを櫂さんのお皿に移す。彼は自分の分も私の分もペロリと平らげて、食器をキッチンへと運んでくれた。
櫂さんの迎えが来るといつものように彼を玄関まで送る、そんな事が本当の夫婦っぽくて私は大好きだった。
「さあて、片付けをしなきゃ! まずは洗い物から……あら?」
フライパンに残ったオムレツの欠片、櫂さんが喜んでくれたのを思い出しその欠片を指でつまんで口の中へ。
「んんっ! しょっぱい⁉」
塩を入れ過ぎたのか、明らかにこのオムレツはしょっぱ過ぎる。ちゃんと味見してなかったから失敗している事に気付いてなかった。まさかこれを櫂さんが全部……?
その時になってやっと、櫂さんが私の失敗に気付いて落ち込まないようにあんな事をしてくれたんだと分かった。
「櫂さん……」
次はちゃんと美味しい物を食べさせてあげなきゃ! まだ彼の優しさに甘えちゃったな、って少しだけ反省もしながら気合を入れなおした。