飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
さすがに家の事全てを一人でと言うのは無理があったので、櫂さんの雇ってくれている家政婦さんと共に掃除や洗濯をやるようになった。最初はそんな事はしなくていいと言われたけれど、出来る事からやらせて欲しいと頼んだら教えてくれたの。
「奥様、これはですね……こうやって」
「奥様」そう呼ばれる度に胸がムズムズしてしまう、嬉しいのと何だかくすぐったいので。何度呼ばれても慣れないけれど、私が櫂さんの奥さんとして認められてる気がして。
あの日、梓乃との電話で自分の中で契約結婚という言葉が重くのしかかるようになった。今まで目を逸らしていたけど、もうそうはいかなくなったような気がする。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「はい、なんですか?」
今の私には沢山相談できる相手がいるわけじゃない。梓乃はきっと今大変な時だろうし、あんな言葉を残した彼女が何か教えてくれるとは思えない。
柚瑠木兄さんの奥さん、月菜さんに相談しようかとも思ったけれどまだ契約結婚の事について話して無いから迷いがある。
だから、つい……
「契約って、何なんでしょうか?」
「え、契約……ですか? そうですね、簡単に言えば法的効果のある約束、そこに権利や義務が生じるということでしょうかね?」
約束、権利や義務。ならば私と櫂さんの契約結婚の意味は? さすがにそんな事他人に聞くことは出来ない、不思議そうに私を見つめる家政婦の女性に笑って誤魔化し私は先に部屋に戻らせてもらった。