飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「……そうだわ、あの契約書」
確かに私と櫂さんは結婚前に契約を交わしてる、でもその内容についてはぼんやりしていてよく聞いてなかった。あの時は櫂さんに再会したことで頭がいっぱいだったから……
署名捺印した契約書は櫂さんが管理すると言って私の手元にはない、けれど櫂さんの部屋に置いてあるのかもしれない。
そう思った私は、彼の書斎に忍び込むことを決めた。
櫂さんは私に書斎に入るななんて言った事はない、だけど仕事に関する大事なものなどに触れてはいけないと思って一度も中に入ったことは無かった。
扉を開ければそう広くない室内に大きめのデスク、分厚い辞書の並んだ本棚に小さなチェストが二つ。片付いていてサッパリしている部屋だった。
「お、おじゃまします……」
勝手に入っておいてお邪魔しますも何もないと分かっていても、ついついそう言ってしまう。人の部屋に勝手に入るなんて初めての事だからかなり緊張していた。
「まずは、デスクの引き出しからよね……」
一番上の棚はカギがかけられてるみたいで、引いても動かない。さっさと諦めて二段目の引き出しを開けると、文房具の類が綺麗に並べてあった。
意外と几帳面なんだわ、櫂さんは。なんて最初の目的も忘れ彼の新たな一面を発見して嬉しくなってしまう。