飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


 おっと、今の目的はそうじゃなかったわ。そう分かっていても、私の知らなかった(かい)さんを一つ見つけるたびに手が止まってしまう。
 今までの恋はとても儚いものばかりで、こうして相手を良く知る事も無く終わっていった。だから余計にこうして相手を知っていく事が楽しくて仕方ない。

「これが櫂さんの愛用の万年筆ね、何度か見たことがあるわ。それでこっちが多分彼のお気に入りのメモ帳。それに……あら、これって?」

 少し分厚いスケジュール帳は使い込まれた感じがある、どうやら去年の物みたいね。こういったものも大切に残しているのがまた可愛いな、なんて思ってパラパラと捲ってみた。
 もし仕事に関する内容だったらすぐに閉じるつもりだった、だけど私の目が留まったのは二階堂(にかいどう)の文字。そこには父の名前と、父の会社の経営に関することが細かく書かれていた。

「ここも、そしてここも……父の経営する会社が赤字? そんな、どうして……?」

 父はそんな事は一切口にした事はない、もちろん妾の子の私にそんな事を話す気も無かったのだろうけれど。大嫌いな父だが、会社の経営者としては一流なのだと思ってた。
 それなのに……

「これ、私が櫂さんと初めて会った日。櫂さんは父の会社に視察に行っている、それに……この日も」

 彼が二階堂の屋敷に来た日はいつも父の会社に櫂さんが出向いていたようだった。でも、それはいったい何のために? 
 私を嫌っている父が可愛がっている姉ではなく、私と櫂さんの結婚話を進めたのも何か関係があるの?


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