飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


「久しぶりですね、千夏(ちなつ)。今日は新河(しんかわ)さんにはちゃんと許可をもらって出てきましたか?」

 もう二十歳過ぎているというのにこうやって保護者のような発言をするのが柚瑠木(ゆるぎ)兄さんらしい。いつまでも私は彼にとって妹のような存在でいるのだと思うと、やっぱり嬉しいのだけど。
 私の前に座る柚瑠木兄さん、でもいつもと違う事が一つ。

「ねえ、月菜(つきな)さんは? 今日は一緒じゃないの?」

 結婚してからの柚瑠木兄さんは私と会う時はいつも月菜さんを連れて来ていた。私も優しくて頑張り屋さんな彼女が大好きで、今日も会えるのを楽しみにしていたのに。
 
「月菜さんは車で待ってもらってます。今日は先に千夏と二人だけで話したいことがあったので」

 どうやら嫌な予感は当たりだったらしい。月菜さんに聞かれたくない、そんな話を今からするということなんでしょうから。
 それは多分、私が考えているどちらかの人について。いいえ、もしかするとそのどちらもかもしれない。

「……千夏に心当たりは、ありますか?」

 柚瑠木兄さんの試すような言葉に、胸の奥がギュッと痛くなる。もしかしたら彼もまだ私にどこまで話そうか迷っているのかもしれない。それならば……

「話というのはお父様の事? それとも父の会社に関わっているかもしれない(かい)さんのこと……?」


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