飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「……千夏は、どこまで知っているんですか?」
「そうね、柚瑠木兄さんの想像してるくらいは」
本当は大したことは知らない、でもこういう言い方をした方が自分も何か情報を握っているフリが出来るはずだから。多分私がほとんど何も知らないと分かれば、柚瑠木兄さんは詳しくは話してくれないでしょうし。
そんな私の覚悟を試すかのように柚瑠木兄さんは、真っ直ぐにこちらを見つめてくる。何があっても私は目を逸らす気はなかった。
「分かりました、千夏もやはりあの家の人間なのですね。ちゃんと覚悟を決めてきているみたいで安心しました」
「兄さん、私は……」
柚瑠木兄さんだけは昔から私を二階堂の家の一員として見てくれた。それは櫂さんの所に嫁いでも変わらないらしい。
覚悟、その言葉でやはり彼が私に話したいという内容が、二階堂の家にとって良くない事だと想像出来た。
「千夏は強くなりましたね、だからこそきちんと話します。実はここ数か月間、二階堂の関わる企業の中でおかしなお金の動きがありました。その調査の結果どうやら千夏の父、二階堂 萩が関わっているかもしれない。そんな報告が上がってきたのです」
「父が……まさか、そんな?」
信じられない柚瑠木兄さんからの言葉に、私はきちんと頭が働かなかった。あの厳格な父に限ってそんな事に関わっているとは思えない。