飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
契約結婚……その裏を知る覚悟をして
「二階堂 柚瑠木さんと会ってきたんだ? だからそんなにご機嫌なんだな、千夏は」
仕事を終えて帰ってきた櫂さんにそう言われて、私も「ふふふ」と微笑んで見せた。今日の昼間に柚瑠木兄さんから聞いたことはまだ彼に話す気はない。
きっと今問い詰めても上手くはぐらかされてしまうに違いないのだから、それならしっかりとこの目で確かめてからじゃないと。
「そうなんです、柚瑠木兄さんの奥さんからちょっと頼まれごとをしたので楽しみで」
「へえ、俺には教えてくれないの?」
そう言って私の頬にキスして櫂さんは甘えるようにこの身体を抱き寄せる。このスキンシップは彼にとってどんな意味があるのかしら?
少し前までは素直に胸をときめかせていたことも、今では少しだけその本当の意味を知りたくなる。
「ふふふ、じゃあちょっとだけ。櫂さん以外には話さないので、特別ですよ?」
「分かってる、俺も千夏には何でも話すから教えてくれ」
……嘘ついちゃダメですよ、櫂さん。私ちゃんと知ってるんですから、とは言えない。今はまだ柚瑠木兄さんの力になれるように、我慢していなくては。
「月菜さんのお友達に赤ちゃんが産まれたそうなんです、それで……」
「ふうん、それは良かったな。頑張れよ、千夏」
私の話を聞いた櫂さんが優しく頭を撫でてくれる、それだけでこんなに嬉しいのに。もし父と櫂さんの関係が良くないものだったら、私はどうすればいいんだろう……?