飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
櫂さんが愛知県に行った日、私はまた彼の書斎へと忍び込んだ。いけない事だって分かってるけれど、少しでも柚瑠木兄さんに協力するためだと言い訳をして。
「お邪魔します……」
そう小さな声で呟いて部屋に入ると、デスクの上に何かが置かれている事に気付く。あるはずの無い物がそこには置かれたままだった。
「あれは、櫂さんのスケジュール帳!」
この前見た、今年の印字が入った手帳を迷わず手に取った。見たくても見れないと思っていたのに、櫂さんが忘れていくなんて……こんなチャンスは二度とないはず。
私は急いで手帳を捲るとその内容に目を通していく。小さな字でぎっしりと書かれているなかには、やはり父の会社に関する情報もあった。
「……量が多すぎる、すぐには覚えきれないわ」
私は櫂さんのデスクからもう一冊のスケジュール帳を取り出し、自分の部屋へと持っていく。ここのは櫂さんが私がハンドメイドをするために準備してくれていたパソコンやプリンターがある。
プリンターのコンセントを差し、スケジュール帳を開いてセットする。一枚一枚コピーするのには時間がかかったが、今日は櫂さんは愛知まで行っているので何とかなった。
コピーした用紙を机に置いて、スケジュール帳を戻すため櫂さんの書斎へ。机の引き出しを開けると先ほどは気にならなかった小さな封筒を見つける。
その字には見覚えがあった、何度かしか目にしてないけれど間違いなく父の筆跡で……手に取って中を開けても何も入ってはいない。
……だけど意味ありげなその封筒の存在がとても気がかりだった。