飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「……なつ、千夏。俺の話、聞こえてる?」
「え! あ、すみません。ちょっとボーっとしちゃってて、なんの話でしたか?」
少し遅い晩御飯を済ませ、ソファーでぼんやりとテレビの画面を見つめていた。番組の内容なんて全然頭に入ってない、それは自分でも気づいていたのだけど。
まさか櫂さんの話しかけている声まで、気付かずにいたなんて……
「最近どうしたんだ? 調子が悪いのならちゃんと言ってくれ、この前もぼんやりしていただろ」
心配そうに私を覗き込む櫂さんに申し訳ない気持ちになるが、本当の事は言えるわけも無くて。隠れてコソコソ櫂さんと父の事を調べてる、そんな後ろめたさからちゃんと顔を合わせられなくなりそうだった。
そんな私に櫂さんは……
「もしかしてデキちゃった?」
「……デキたって、何がです?」
彼の言っている言葉の意味が分からずに、私は首を傾げた。そんな私の様子を見て櫂さんはにっこり微笑んでなぜかお腹の方へと手を伸ばしそこを撫でてきた。
「デキたって言えば、俺達の赤ちゃんに決まってるだろ?」
「あか……っ⁉」
いくら世間知らずで育てられてきた私だって、どうすれば子供が出来るかくらいは知っている。少なくとも私と櫂さんの間に赤ちゃんが出来るわけが無い事くらい分かる。
……私たちの関係は、まだそこまで進んでいないのだから。