飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
その事があった日から、屋敷の中はいつも以上にピリピリとした雰囲気に包まれた。私が部屋から出れば使用人たちはコソコソと陰口をたたき、姉や兄は私に対してのあからさまな嫌がらせを繰り返した。
……いったい私が何をしたと言うのか? 彼らを怒らせている理由も分からない、けれど親や兄弟のハッキリとした私への怒りを感じていた。
それでもまた土曜が来れば彼に会えるかもしれないと思うと、少し元気が出たのだけど……
「今日の百々菜お嬢様、すごくめかし込んでらっしゃいましたが何事ですかね?」
「姉さんが? 私はいつものように部屋から出るなとしか言われてないけど……」
この家に何かあっても、よほどの事が無ければ私は同じ部屋にいる事も許されない。柚瑠木兄さんが来た時には呼ばれるようになったけれど。
何かあっても愛人の子でしかない私には関係がない、そう繰り返し言われ続けてきたのだから。
「例の縁談話、とうとう纏まるんでしょうかね? あのヒステリーな百々菜お嬢様の相手なんて気の毒に」
「……そうね、でも相手次第で姉さんも変わるでしょうし。それより……今日はもう上がっていいわ、疲れたから早く休みたいの」
まだ彼が来る時間ではないけれど、早々と使用人の女性に帰っていいのだと伝えた。普段遅くまで働いてくれている彼女は、頭を下げると私の部屋から出て行った。
スマホで時間を確認し、ベッドに腰かけてメッセージの確認をする。柚瑠木兄さんの奥さんの月菜さんが私にメッセージを送ってくれるから。
彼女からのメッセージの内容を確認しようとすると、窓に何かが当てられる音がした。
……きっと、彼が来たに違いない。私は慌ててスマホを持ったまま、部屋の窓を開けてベランダへと出る。