飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「準備は出来たか、千夏。そろそろ出ないと混む時間になるかもしれない」
「あ、はい! すぐに出ます、えっと……」
すでに車のエンジンをかけて玄関の前で待っている櫂さんに返事をすると、早起きして作ったお弁当のバッグを持って外に出る。出先でレストランに寄ることも考えたけれど、せっかくなので櫂さんにお弁当を食べてもらおうと思ったの。
「楽しみだな、千夏のお弁当」
「そんなに期待されると困ります、失敗してても笑わないで下さいね?」
念のためにそう言っておくと、櫂さんは「千夏が作ったものなら何でもおいしいよ」なんて笑ってみせる。ヵれのそういうとこ、やっぱり好きだなって思う。
でもそうしても変えられないのは、私達が契約結婚をしているということ。
――もしそういう相手を好きになった場合、どうすればいいのかしら?
胸の奥がチクンと痛む、もし叶わない恋をしているのならこれ以上櫂さんに近づくのが怖い。もし本当に好きになったら、私は……
そこで考えるのを止めて、櫂さんがドアを開けてくれた助手席へと乗り込んだ。
「さて、何か音楽でもかけようか? 俺はまだ千夏の好きな曲を知らないし、教えてくれると嬉しいんだけど」
櫂さんはいつもと変わらない笑顔で、私に話しかけてくれている。だから今を楽しまなくっちゃ、そう思ってお弁当のバックを強く抱きしめた。