飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


「ふふふ、良い匂い。(かい)さんのあったかい香り……」

 そう思ってクンクンと鼻を鳴らすと、櫂さんが少し照れたように首元に手をあてた。ちょっと耳が赤い様な気がするのは、きっと気のせいじゃない。

「そうやって千夏(ちなつ)は俺の理性を試してくるよな、いつまでも俺が我慢できると思うなよ?」

「な、なんでそうなるんですか!」

 櫂さんの穏やかでない台詞についつい後退ってしまいそうになる。こんな時の彼の言葉は本気なのか分からないからドキドキするの。
 私を揶揄って遊んでるだけなのか、それとも本当に私をそういう対象として見てるのか。知りたいような、知りたくないような複雑な気持ちで……

「あのな、俺は枯れたジジイじゃないんだ。毎晩隣で可愛い寝顔を見せられても我慢してるんだから、ご褒美くらい欲しくなるだろ?」

「ご褒美って……?」

 なんだか嫌な予感のする単語に、私は身構えてしまう。こういう時の櫂さんは意地悪だから、私が困るような事ばかり言ってくるんだもの。
 そんな私の予想は当たってて……

「そうだな。千夏にやって欲しいことはたくさんあるけど、せっかくだから今度までとっておこうかな」

 今度っていつ? それを聞くと後悔する気がしたのでそのまま聞き流しておく。もし櫂さんがこのまま忘れてくれたらラッキーだし、なんてそのくらいの気持ちでいた。


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